「謝肉祭(Carnaval)」(村上春樹 著『一人称単数』より)を読んで

はじめに
Etse sen(元気ですか)? Adjoaです。
先日『一人称単数』を読みました。この本は、村上春樹氏による短編集です。普段なら1冊につき1本読書記録を書いているのですが、この本は短編集なので1編ずつ記録をつけていこうと思います。本日は6作目「謝肉祭(Carnaval)」の感想をこちらに記録します。
※本記事にはネタバレが含まれます。
「謝肉祭(Carnaval)」概要
彼女は、「僕」がこれまで知り合った中でもっとも醜い女性だった。彼女と出会ったのは、ある演奏会での休憩時間だった。
彼女がどんな仕事をしているのかはわからない。彼女は自分のことをほとんど話さなかった。しかし、僕と彼女は音楽の趣味がとても合った。無人島に一曲だけピアノ曲を持っていけるとしたら、何がいいか? 彼女はそう尋ねた。僕は思い切って答えた。「シューマンの『謝肉祭』」と。彼女も昔から『謝肉祭』が大好きだった。
それから僕たちは私的な『謝肉祭』同好会のようなものをつくった。2人で『謝肉祭』のレコードやCDを聴き、コンサートにも行った。
しかしあるときから、彼女と連絡がとれなくなった。彼女と長い間連絡がとれなくなったのは初めてのことだった。それから、もう1度彼女を目にしたのはテレビのニュースの中だった――。
感想
私はクラシック音楽に関する知識がまるでありません。彼らが熱心に語り合う『謝肉祭』も知りません。でも、知らないからこそ彼らの語りから音楽を想像するのが面白かったです。たとえば、彼女のこのセリフ。
この作品は、ある意味では遊びの極致にある音楽だけど、言わせてもらえば、遊びの中にこそ、精神の底に生息する邪気あるものたちが顔を覗かせるのよ。
『一人称単数』(村上春樹 著)P171
そして、クラシック音楽のわからない私でもこの作品が面白いと感じたのは、やはり村上春樹らしさがあるから。女性の容姿が醜いところから始まり、彼女が音楽以外のことはすべて謎に包まれているという点。そして、あるときから急に連絡がとれなくなり、次に彼女が姿を現したのはテレビの中で、それが詐欺事件で逮捕されたというニュースだった、という点など。やっぱりその人らしさのある小説は面白いな、と思いました。