「クリーム」(村上春樹 著『一人称単数』より)を読んで

はじめに
エティセン(元気ですか)? Adjoaです。
先日『一人称単数』を読みました。この本は、村上春樹氏による短編集です。普段なら1冊につき1つ読書記録を書いているのですが、この本は短編集なので、1編ずつ記録をつけていこうと思います。本日は2作目「クリーム」の感想をこちらに記録します。
※本記事にはネタバレが含まれます。
「クリーム」概要
浪人生だったぼくは、ある日昔の知人の女の子からピアノ演奏会の招待状を受け取る。掃いて捨てるほど暇を持ち合わせていたぼくは、出席の返事を出す。そして演奏会当日、花束を買って会場へと向かうが――。
感想
「奇妙な出来事について、ぼくはある年下の友人に語っている」と冒頭に書いてあるのに、途中までの平和な展開でそのことをすっかり忘れていました。そのため、主人公が演奏会に向かう途中で、人通りがなさすぎることに不吉な予感を抱いたところで「えっ? そんな展開?」と驚きました。
そして閉ざされていた演奏会会場からの帰り道、主人公が公園で出会った老人との話が、2つ目の奇妙な出来事でした。老人から発せられた言葉は「中心がいくつもある円や」。そして老人は言う。「もう一回目をつぶってな、とっくり考えるんや。中心がいくつもあって、しかも外周を持たない円のことを。きみの頭はな、むずかしいことを考えるためにある。わからんことをなんとかわかるようにするためにある。」
「なるほど、私たちはわからないことをわかるようにするために脳みそを持っているのか」と素直に思いました。最近色々と悩みの多い私は、「悩みを解決するために私は脳を持っているんだな。じっくり考えよう。考えることは無駄じゃない」という学びをこの短編小説から得ました。おそらくそういう目的の小説ではないと思いますが、今の私にはその老人の教えが印象に残りました。
短編でも村上春樹らしさがぐっと詰まった小説でした。