「品川猿の告白」(村上春樹 著『一人称単数』より)を読んで

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はじめに

Etse sen(元気ですか)? Adjoaです。

先日『一人称単数』を読みました。この本は、村上春樹氏による短編集です。普段なら1冊につき1本読書記録を書いているのですが、この本は短編集なので1編ずつ記録をつけています。本日は7作目「品川猿の告白」の感想をこちらに記録します。

※本記事にはネタバレが含まれます。

「品川猿の告白」概要

行き当たりばったりの一人旅をしていた「僕」は、ある鄙びた温泉宿に宿泊する。案内された部屋は、布団部屋のように狭く、暗く、床は歩く旅に不吉な音を立てて軋んだ。しかし、建物の貧相さに比べて温泉は素晴らしかった。

しばらくすると、猿が風呂場に入ってきた。「失礼します」と言って。猿は風呂場の桶を片付け、湯の温度を確かめると、今度は僕に向かって尋ねた。「お湯の具合はいかがでしょうか?」と、人間の言葉で。

風呂で話しているうちに、僕はもっと猿の話が聞きたくなり、部屋で一緒にビールを飲むことになった。猿は自分を「品川猿」と名乗った。温泉宿で語られる品川猿の身の上話とはどんなものなのか。そして品川猿の告白とは――。

感想

まず、廃れた場所好きな私としては「この温泉宿、泊まってみたい!」と思いました。

猿が出てきたときは、絵本を読んでいるような気分になりました。人間の言葉をしゃべる猿が出てきて、主人公の背中を流し、世間話をし始める。なんて夢のある話なんでしょう。ちょっと童心に帰った気持ちを楽しめました。

しかし、ファンタジーの世界に浸ったのも束の間でした。「僕」の部屋で語られる猿の身の上話は、悲しいものでした。人間に飼われていたために、猿は人間の言葉を話せるようになった。しかしその後山に捨てられ、野生の猿の仲間入りをしようとしたけれど、猿の言葉が話せず、群れを離れて1人で暮らすようになった。「身勝手な人間のせいで、可哀そうだな。そういうのって、現実にもあるのかもしれないな」と私は思いました。

そして、猿は身の上話を続けます。猿は、「特殊な能力を持ち、恋した人間の女性の名前を盗んできた」と告白します。猿に名前を盗まれた女性は、ときどき自分の名前を忘れてしまうことがあるのだそうです。これはちょっと怖かったです。猿だからまだいいけど、これが人間の男性だったら気持ち悪すぎるな…と思って読んでいました。

小説の最後に、自分の名前を思い出せない女性が登場し、それが猿の仕業なのか否か…と、やや謎を残す感じで終わりました。個人的には割と好きな感じのエンディングでした。全体的に面白いストーリーでした。

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