「ウィズ・ザ・ビートルズ」(村上春樹 著『一人称単数』より)を読んで

はじめに
エティセン(元気ですか)? Adjoaです。
先日『一人称単数』を読みました。この本は、村上春樹氏による短編集です。普段なら1冊につき1つ読書記録を書いているのですが、この本は短編集なので、1編ずつ記録をつけていこうと思います。本日は4作目「ウィズ・ザ・ビートルズ」の感想をこちらに記録します。
※本記事にはネタバレが含まれます。
「ウィズ・ザ・ビートルズ」概要
高校生のときに、高校の廊下で1度だけ見かけた少女。あの少女は腕にビートルズのレコード「ウィズ・ザ・ビートルズ」を抱えていた。彼女を見たとき、「僕」の心臓は堅く素早く脈打ち、うまく呼吸ができなくなった。プールの底まで沈んだときのようにまわりの音がすっと遠のき、耳の奥で小さく鳴っている鈴の音だけが聞こえた。しかし、その後もう一度彼女と出会うことはなかった。
その後、僕は別の女の子と付き合うことになる。
感想
これまた村上春樹らしい短編小説でした。小説? 小説で良いんですかね? ここまでに読んだ短編についても、小説なのかエッセイなのか…と疑問に思いながら読んでいましたが、「ウィズ・ザ・ビートルズ」はエッセイ寄りな感じがしました。実際のところどちらなのかはわかりません。
本物の恋に落ちることを「鈴を鳴らす」と表現しているところがなんとも素敵な表現だな、と思いました。何人かの女の子と付き合ったが、鈴の音を聴くことはなかった。結婚した女性と出会ったときは、鈴の音が聴こえた。これがまた良いなぁと思いました。これまで私が読んだ村上春樹氏の作品の中ではあまりこういうロマンチック話はなかったので、ちょっと意外な感じもしました。
しかし、初めて付き合った彼女とは別れることになる。それから10年以上経って、「僕」は東京でその女性の兄と再会し、彼女が自殺していたことを知る。彼女は何の前触れもなくあっさりと亡くなってしまったらしい。この辺りはやっぱり村上春樹だなぁと思いました(ここは実話ではなく小説だと信じたい)。
そして、少女が抱える「ウィズ・ザ・ビートルズ」のレコードに始まり、何かとビートルズの楽曲が登場するこの一作。私はビートルズの楽曲をあまり知らないので、タイトルが出てきても「ふうん。そういう曲があるんだ」程度にしか思いませんでした。しかしビートルズに詳しい人はよりこの小説を楽しめるのかもしれません。
これがエッセイだとしたら村上春樹氏の恋事情を垣間見れるのは面白いし、小説だとしても彼らしい謎めいた面白い一作でした。